about BRUNO MUNARI - ART

 
ムナーリとアート
役に立たない機械(1)
ムナーリが1934年に作った「役にたたない機械」のひとつです。風で動く一種の彫刻?現在ではモビールと呼ばれるタイプのオブジェですが、マルセル・ デュシャンが「モビール」という呼び方を、この分野の第一人者カルダーの作品(ちなみにカルダーの作品はモーター駆動)に対してしたのが1932年だそう ですから、ほとんど同時代の出来事ですね。(018)
ムナーリのオブジェ
「刷毛のお嬢さん」(La Pennellessa)という名前のオブジェです。まあ、説明の必要はないですね。シンプルで、面白い。でも美術評論家が文句をつけそうです「ムナーリは芸術で遊んでいる」。 誰もが見て「こういうアイディアがあったか」「これなら自分にだってできる」というようなシンプルなアイディアこそ知性なくしては生まれない、とムナーリは言っています。(025)
イタリア未来派
ムナーリが若き日に関わった「未来派」とはなんでしょうか。ちょっと調べてみました。「未来派」というのは二十世紀初頭のアバンギャルド芸術運動の一つ で、中心人物はマリネッティというイタリアの詩人・小説家です。1909年。マリネッティの発表した宣言から始まったと言われています。
未来派は新しい芸術のキーワードとしてスピードや機械文明を支持しています。乱暴な言い方をすると「近代主義(モダニズム)」の一つの形だったのではない でしょうか。未来派の一部が「国家としてのイタリアの発展を掲げた」ファシズムに接近したところといい、イタリアの近代建築における合理主義運動と似てい ますね。
ムナーリは1940年代後半(マリネッティの晩年から死後?)未来派に関わったようです。(031)
ムナーリの絵(1)
「灰色の物質の中の 飛行」というタイトルだそうです。いつごろの作品でしょうか?(034)
ゼロックス(ゼログラフィア)
ゼロックスは商標ですが、海外だと「コピー(コピー機とかコピーするとか)」の代名詞です。コピーというのは「同じものを複写する」ためのものですが、ムナーリは「一枚ずつ違うゼロックス」というワークショップを考え出しました。 コピー機の上に複写する画像を置いて、スイッチを押したら機械が動くと同時にオリジナルの画像を自由に動かす、それだけのことで世界に一枚しかない「コピー」が出来ます。 役に立つ立たないよりも大切な何かがこのアイディアに隠れていませんか・・・?(050)
空気と遊ぼう(1)
若きムナーリが発表した「役に立たない機械」は空中で風にゆれるオブジェ(モビール)でしたが、その他にもムナーリは空気を意識した作品をいくつかデザイ ンしています。ムナーリの作品「空気の機械」も一種のモビールですし、金属のメッシュを立体的にひねって作った不思議な造形(concavo- convesso,1950)などもムナーリの代表作の一つとしてよく紹介されています。「空気だって目に見えるようにすれば遊び道具になる」 (Anche con l'aria si pu' giocare se si riesce a vederla)とムナーリは言ったそうです。(056)
空気と遊ぼう(2)
昨日ご紹介した写真の中でムナーリが空気と遊ぶために作った、「concavi-convessi(凹凸)」の作り方メモを見つけました。blogの写真 では小さくてわかりにくいかもしれませんが、要するに正方形のメッシュを用意し、四隅の角を左上から逆時計回りにA,A',B,Cとします。さらに下辺の A-B間の2/3の位置にB'を、B'から右斜め上の面上にC'を決めて、A-A',B-B',C-C'をくっつけるようにしてねじればできあがり。実際 に試してみないとこの説明でよいのか自信がありませんが・・・。(057)
ムナーリの絵(2)
以前「灰色の物質の中の飛行」というタイトルの絵を紹介しましたが、別の絵を見つけました。1974年の作品ということなのでムナーリ40歳の時のもので すね。タイトルは不明ですが、見方によっては「睡蓮」を連想させるような抽象画に見えます。(059)
西暦2000年の化石
ムナーリが1996年に(それ以前1959年にも)作ったオブジェです。「現代の事物が化石になったとしたら」ということでしょうか、アクリルの中に電子部品が封入されています。示唆に富んだオブジェ、というべきでしょう。(060)
旅の彫刻
1950年の作品だそうです。折り紙のような金属の小さな彫刻ですが、これは旅先へ持っていくためのもので、なぜなら「旅先の宿というものは自分の普段の 生活:日常の道具から切り離された寂しさがある。ならば自分の見知った、なじんだオブジェを旅先にも飾ることで、旅愁を癒すことができるかもしれない」と いうコンセプトだそうです。(061)
ムナーリの石
ムナーリは私たちが日常見慣れているはずのものを意外な視点で見直すことを教えてくれます。たとえば、河原などにある沢山の石にもいろいろな表情があり、 その表面の模様に一筆加えたら、そこにさまざまなお話を見いだすことだって出来る。というわけです。「da lontano era un'isola」という本から。(078)
ダイレクト・プロジェクション
先日ご紹介したプロジェクターによるコラージュはムナーリが1952年に発表しています。ベバ・レステッリさんによると、このコラージュはムナーリがライ ティングテーブル(スライドなどを見るための発光するテーブル)で自作のスライドを作ろうとして思いついたとのこと。
ムナーリは「将来われわれの生活空間はますます狭く、小さくなるだろう。だからアートワークもスライドのように小さくしておき、これをプロジェクション(投影)して鑑賞するようになるかもしれない」と言っていたそうです。(086)
negativo positivo
ムナーリは「negativo positivo(陰と陽)」という作品(多くが平面:リトグラフでしょうか)を繰り返し制作しています。色と形の構成ですが、そこに見える「形」と 「地」がどちらがどちらともとれる/見方によって主従が入れ替わることをねらったものだそうです。
単なる連想ですが、イタリアの伝統的な都市空間について論じた本の中に(ローマなどの)都市を上空から見たときの建築と空隙の関係が見方で入れ替わる、という説明があったことを思い出しました。(099)
multiplo
ムナーリが1961年に作った彫刻「連続する彫刻(scrutture continue)」です。切れ込みのついた金属片を組み合わせてできていますが、分解することができ、木の台座に施された隙間に分解したパーツが収納されます。
ムナーリはこの時期「multiplo」と呼ばれるアート作品の複製化にとりくんでいたようで、いわゆる一点のオリジナルしか存在しない従来のアートの枠 を越えて作家による作品でありながら版画のように複製を作る、という考えに基づいた活動だったようです。デザインとアートの両サイドで活躍したムナーリら しい考えだと思います。(106)
色と形
ムナーリが1965年に作った「テトラコーンSM」というオブジェ?です。四角い枠(箱)の内側に円錐形が四つ、それぞれ独立して回転するようになってお り、またそれぞれの円錐には半分ずつ反対色(緑と赤)が塗られていて、円錐が回転することでさまざまな色の混ざり合いを目にすることが出来る、という「一 種の機械」だそうです。機械を賛美した未来派芸術の影響だけでなく、アイディアを実現するために技術(テクノロジー)を積極的に用い、なおかつ技術をアイ ディアに優先させないところがムナーリのスタンスではないかと思います。(117)
役に立たない機械(2)
「役に立たない機械(macchina inutile)」というタイトルのムナーリの初期作品はいくつもあって、「モビール」に似たものがもっともよく知られていると思いますが、同じように動 くオブジェでも形や素材がかなり違う作品もあります。
基本的に「機械は目的があって動くものだが、私の作品は動きに目的がないので、役に立たない機械なのだ」というようなことをムナーリは語っていたそうです。(118)
ムナーリの彫刻
ムナーリが作った彫刻(大型の)がイタリア国内のあちこちに設置されているそうです。ご紹介しているのはナポリに設置された「Cesenatico」と呼 ばれる作品。基本的に金属の板状素材を使った「旅の彫刻」に似たフォルムの作品のようです。いちど現地を訪ねてみたい気がします。(125)
不整脈な(ぎくしゃくした)機械
ムナーリが1950年代から80年代に書けて断続的に作ったぜんまい仕掛けのオブジェです。ゼンマイモーターと鋼線の結合による、ぎくしゃくとした動きの オブジェになっていますが、これもまた一種の「役に立たない機械」といえるのでしょうか。(129)
ムナーリの絵(3)
ムナーリが1932年(24~25歳)ころに制作(発表)した作品(水彩)です。走る人の躍動感を表現していますが、スピードを新しい時代の象徴として称揚した未来派の影響を感じる一枚です。(138)
ムナーリと具象芸術協会(MAC)
ムナーリは1948年にミラノで結成された「具象芸術運動(MAC~Il Movimento d'Arte Concreta)」に参加しています。この団体(活動)にはマックス・フーバー、エットーレ・ソットサス、マックス・ビル(ウルム造形大学初代学長)、 ルーチョ・フォンタナなどのアーティストが参加していたようですが、前二者はむしろデザイナーとして活躍した人ですね。
この芸術運動は、基本的に抽象芸術の分野で色、線などによって構成される純粋な美の追究を目指していたようです。具象美術というと写生的な美術を連想する のですが、むしろそういった具体的なモチーフの描写に含まれる意味や象徴性を排除した美のありかたを考えた、ということでしょうか。(146)
ムナーリのタコ
ムナーリは自然物や生活の中にあるいろいろな物(オブジェクト)にちょっとした仕掛けを施して、意外なオブジェに仕立ててしまう「見立て」の名人だったと 思います。ご紹介しているのは「オリンピーノ山のタコ」という名のオブジェですが、木の根っこで面白く遊んでいます。ちょうど、野原でいろいろな宝物を 拾ってきて遊ぶこどものようです。(148)
ムナーリと竹
自然素材、特に木を好んで作品に使用したムナーリですが、欧米には珍しい竹をモチーフにした作品もあります。ご紹介しているのはまるで日本の伝統的な花管 のようなスケッチはまさに竹の花瓶と題した一連のスケッチで、1965年にムナーリがこれらをデザインした後、1985年の青山こどもの城での展覧会に際 してあらためて(日本で)作ったものの一部です。(153)
ムナーリのオブジェ「filipesi」
1984年にムナーリが作った、アルミのチューブとワイヤーだけで構成された構造体です。「役に立たない機械」のように天井からつるすとそのものの重さで 構造の形が定まり、そのままゆらゆらとゆれる一種のオブジェですが、「テンセグリティ構造(張力材(ひも)と圧縮材(パイプ)を組み合わせた構造体。 Kenneth Snelsonが考案し,Buckminstar Fullerが命名した)」にも似ています。名前「filipesi」とは「ワイヤとおもり」の意味(イタリア語)です。(159)
布の上の油(olio su tela)
荒い織りの布地にオイルをたらして模様をつけた作品です。いくつかのバリエーションがありますが、写真の作品は1980年のものだそうです。東洋の書や禅 画の影響があるようですが、オブジェとも抽象画ともいえる、不思議な作品です。(168)
ムナーリのチャイム
1991年にダネーゼのギャラリーで展示された作品です。ドアに取り付けられたパイプのベル(一種のウィンドベル?)がドアの開閉によって音を奏でるという仕組みですね。作品のタイトルも「ドアベルの代わりに(invece del campanello)」です。(171)
ムナーリの犬(陶芸)
ムナーリはファエンツァという陶器産業の盛んな町で粘土をつかったこどものための常設ワークショップにかかわっていましたが、アーティストとしても粘土の作品を早くから作っています。
写真の作品は1934年頃のものといいますから、ムナーリが20代(27歳?)の作品ですね。ブルドッグだそうです...。(172)
金属の本
ムナーリの作品についてウェブ上を検索している内に見つけた作品です。古ぼけた本の装丁に見えるのですが、この本はどうやらすべて金属でできています。1933年にムナーリが未来派のTullio d'Albisolaとコラボレートして作った作品のようです。(176)
ムナーリへのオマージュ
「ムナーリへのオマージュ」という作品を作っている作家がいました。エリゼオ・ロヴァッティ(Eliseo Rovatti)という人で、1940年生まれ。ミラノ在住のアーティストだそうです。経歴を見る限りではムナーリ自身とどのような接点があったのかわか りませんが、おそらくアーティストとして何らかの親交があったのでしょう。ムナーリの作品「Tetracono」そっくりのオブジェも作っているようで す。(182)
知られざる人々の読めない文字
ムナーリは文字やカリグラフィー(習字)に強い興味をもち、特に東洋の書からインスピレーションを得て様々な作品を作っています。1984年の「知られざ る人々の読めない文字(scrittura illeggibile di un popolo sconosciuto)」もそういった作品の一つといって良いでしょう。ムナーリらしいな、と思うのは作品がグラフィックワークのようにも、タイポグラ フィーのようにも、カリグラフィーのようにも、版画のようにも見える、一種の軽やかさがあるところでしょうか。復活したダネーゼで販売されています。ダ ネーゼのサイトはこちら(イタリア語・英語)https://www.danesemilano.com/(183)
マフィアの肖像(オブジェ)
「マフィアの肖像」と名付けられたムナーリのオブジェです。いろいろな素材やレディメードのパーツを組み合わせて意外なユーモアを醸し出すのが実に上手で す。ちなみにイタリアでは下っ端(ちんぴら)を除くと、日本の同業者のように外見ではそれと分かるマフィアは少ないといいますが...(187)
ムナーリの小包
ムナーリがこどものためのワークショップでおこなった「プレゼントを作ろう」というテーマの作品のひとつです。タイトルが「マルコへ、ピーター、マリアテ レーザへ(いずれも名前)」という、そのまま「○○ちゃんへ」という雰囲気ですが、ワークショップのテーマはいかにいろいろな素材で素敵なオリジナルパッ ケージを作るかということですね。家の引き出しの中に眠っていそうな雑多な紐やリボンで面白い作品が作れる、という新鮮さに惹かれます。(177)
「目の見えない子供へのメッセージ」
「触ってみようの実験室」(lavoratori tattili)のプログラムの中に「触ってみようの手紙」とでも言えるような触覚を喚起するオブジェを作るアイディアがあります。ムナーリのスケッチに よると、天井から下がった紐にさまざまな触感の素材が、作り手のメッセージにそって組み合わされ、それを触ってどんなメッセージを受け取ることが出来るだ ろう、というもののようです。このワークショップはイタリアではベバ・レステッリさんたちが引き継いで現在も展開しているようですし、昨年末東京で開かれ たブルーノ・ムナーリ展のワークショップでも見ることが出来ました。(189)